退院後に装具が壊れて困る前に──なぜ「2具目」が必要なのか?

退院後に装具が壊れて困る前に──なぜ「2具目」が必要なのか?

回復期に長下肢装具を作ることが多いけれど

回復期に長下肢装具を作ることは多い。私自身もそうだし、退院後の生活期で更生用装具を作ることも少なくない。
だからこそ入院中に「短下肢装具として2具目を作ってほしい」とお願いしている。退院してから本当に困るから。特に長下肢装具を作った場合はなおさらだ。

生活期に入ると装具が作りにくい理由

生活期に入ると装具を作るのはとにかく難しい。理由はわかりやすく明確だ。

医療とのパスが切れる

退院すると、装具を処方してくれるドクターとの関わりがなくなる。更生用装具でも治療用でも、制度の中で作ろうとすれば医者との関わりは絶対に必要だ。

書類対応が複雑かつ装具の完成まで時間がかかる

更生用装具を製作するときに、文章判定を採用している自治体では、医者にやってもらわないといけないことが多い。
でも医者からすると「見たことも聞いたこともない書類をなぜ書かないといけないの?」となるのは自然な反応だ。制度の仕組み自体が現場の実態に合っていないのだと思う。

仮に医者が文章を書いてくれたとしても、判定が下りてから支給券が発行され、装具が完成するまでには時間がかかる。巡回相談で直接判定を受けても同じで、1~2か月待つことは珍しくない。もし装具が壊れてから申請するとなれば、その間は装具なしで過ごすことになり、生活への影響や変形リスクは非常に大きい。

POの人手不足

更生用装具は病院と関係ないので、POは病院以外で対応することになる。しかし人手不足で在宅を回る余裕がほとんどない。支給券が届いても「POが来ない」状況は現実にある。壊れた装具なしで過ごす期間が生まれるのは、ユーザーにとっても深刻だ。

修理で何とかなる? → 実は限界がある

「壊れたら現場で修理すればいいじゃん?」と思うかもしれない。
確かにベルト交換など簡単な修理は現場で対応できる。でも多くは部品を作り直す必要があり、その場ですぐ直すのは難しい。応急処置はできても根本対応にはならない。

さらに修理に向かう移動時間やコストは公費で出ない。利用者への直接請求になることも多く、修理費用より人の移動コストのほうが高い。もちろん「行きたい気持ち」はある。でも時間やコスト、業務量の制約がある以上、すべてに対応するのは現実的に難しい。限られた人員や資源をどう配分するかという課題があるのだ。

回避策は「退院前に2具」+「更生用で3具目」

だからこそ、回復期に長下肢装具を作ったなら、保険者が許してくれるなら入院中に2具目まで作ってほしい。
長下肢装具はカットダウンすれば短下肢装具として使えるし、短下肢装具を別で作れば合計2具の短下肢装具を持つことができる。両側支柱とプラスチックなど用途の違いはあっても、「完全に装具なしの状態」だけは避けられる。

地域によっては難しいところもあるけれど、年に何度も「2つあって助かった」という場面に遭遇する。特に装具を作ってから1~2年の間に。

装具がある安心感をどう提供するか

更生用装具を作るのは、ユーザーにとっても簡単ではない。制度や手続きの負担が大きく、時間もかかる。POにとっても時間やコストの制約の中で対応する必要がある。
でも「まぁこれがあるから大丈夫」という安心感があるかどうかで、生活の質は大きく変わる。

退院後に装具が壊れて活動できない──そんな状況を避けるためにも、退院前に2具を、そして更生用で3具目を。これはユーザーにも供給側にも、無駄な時間の浪費を減らすために必要なことだと思っている。

これからどうするか

これからは、医療機関で補装具費支給制度について説明する機会をもっと多く持ちたいと考えている。制度を知ってもらえれば、退院後を見越した逆算がしやすくなるし、「よくわからないからやめておこう」という認知負荷による行動回避も減るはずだ。

さらに、生活期に入った人が今どう過ごしているのかを病院にフィードバックし、情報を共有することも大切だと思う。自分が関わった装具がその後どうなったのかを知ることは、医療者にとって次のモチベーションにつながる。現場にとっても、制度にとっても、この循環をつくることが一番効果的だと感じている。